辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
「アンネを取られてしまうかもしれない」

そのことが頭をよぎる。

「おかーたま。ぽんぽんいたい?」
泣きそうな顔をしていたようで、アンネが私を見上げる。

「ごめんね、大丈夫よ」
子供にこんな顔をさせてしまう私は母親失格だ。

とりあえず昼食の準備をしなければ。そう思った時、ドアがノックされる。

ロゼが気にして来てくれたのだろうか。手にパンを持ったまま、私は木の扉を開けた。

「ごめんね、大丈夫よ……」
そう言って顔を上げた私だったが、次の瞬間パンが床に転げ落ちる。

目の前には信じられない人が立っていた。

二年前に見た時より、洗練された印象と大人びた表情。

しかし、シルバーブルーの髪も、同色の瞳も私の知っているそれと同じだった。

「どうして……」
呟いた私に、なぜかわからないほどの冷たい視線を向けられる。

「フェリーネ」
知っている声より低く響いたその言葉の続きを遮ったのは、アンネだった。

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