辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
「そんなことを言ってないで。アンネちゃんを見て安心したでしょ? 湯を張ってあるから入ってらっしゃいな」

「そんな……」
部屋だけでも申し訳ないのに、アンネを見てもらって、湯に入るなどできるわけがない。

そんな私の心の中がわかったのだろう。
コレットさんは腰に手を当てると、まったくといった様子で私を見る。

「普通の子なら王子殿下の城に来ただけで浮かれそうなものなのに。大丈夫と言っているんだから遠慮はしなくていいんですよ」

「でも……」
まだ遠慮する私に、コレットさんは小さく息を吐いた。

「まあ、確かにいきなり殿下のお城なんて言ったら緊張するのはわかりますけどね。今はいないんだし、ずっと眠りっぱなしで汗もかいてるし、さっぱりしたいでしょ?」
確かにかなり汗をかいたようで、身体はべたついている。以前の家にも水を浴びる場所はあったが、大きな湯船につかるなんて何年ぶりかわからない。
母が生きていたころ以来かもしれない。
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