辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される


それに今は殿下はいない。その事実が少し気持ちを楽にした。

「ありがとうございます」

ようやくお礼を伝えて微笑んだ私に、コレットさんは満足そうに頷いた。

それにしても、殿下は何を考えてこんな私に親切にしてくれるのだろう。

不安と期待が入り混じったような複雑な気持ちのまま、私は案内された湯殿へと足を踏み入れた。

身体を清め、久しぶりのたっぷりのお湯に身体を埋めれば、体の奥底からホッとして大きく息を吐いた。

「気持ちいい……」

つい声が漏れてしまったが、今それを聞く人は誰もいない。
私はじっとお湯をすくい、手の隙間から零れ落ちる水を見つめた。

これからどうなるのだろう。

アンネを産んで、半年が過ぎたころから父親はいないものだと思って生きてきた。
それが今更現れて、ましてや王子だったなんて……。

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