いっそ、君が欲しいと言えたなら~冷徹御曹司は政略妻を深く激しく愛したい~
第二章 凍りついた淡い想い
 翌週の月曜日は、朝から雨だった。

 夏の暑さに未練を残すような気候が続いていたのに、少し肌の表面にチクリとする冷たさを感じる。

 季節の変わり目を秋雨に教えられる時期。気持ちが引きしまる気がして意外と好きな気候なのだが、なぜか今日は気持ちが沈んでいた。

「よし、お洗濯終わり」

 洗濯物を運んだプラスチックの籠を洗濯機の上に置き、ひとり呟いてから深く息を吐く。別に洗濯物が大量にあって疲れたというわけではなく、ただ単に気分が重たいのだ。

(雨だからかな……)

 本格的な梅雨の時期ならともかく、数日天気がぐずつくくらいで気持ちが落ち込んだことはない。これはもしや体調が悪いのではと、いろいろと自分を疑ってみた。

 月曜日はお店が定休日なので、だいたい午前中は掃除や洗濯に費やされる。掃除といっても日々気が付いた部分はやっているので簡単で済むし、洗濯もそれほど多いわけではない。

 母と暮らしていた頃からずっと使っている洗濯機は古いタイプで、最近調子が悪い。ひとり暮らしならコインランドリーの方が便利だよと同僚に教えてもらい、気持ちが揺れている。

 中古でもいいから買い替えるか、コインランドリーデビューを果たすか。

 買い替えを諦めれば洗濯機を置いていたスペースが開くので、小さな収納ラックを置いてもいい。

 そんなことを考えながらレモネードを作る。水で簡単に溶けるスティックタイプ。少しだけ水を多めにするとさっぱり味でごくごく飲めるので気に入っている。

「買い物に行っておいた方がいいかな」

 レモネードのスティックも残り三本しかない。あとは野菜と生鮮食品を少し。食用油が切れそうだったのも思いだした。

 午後からは買い物になりそうだが雨はやむだろうか。今日はただでさえ気持ちが落ち着かない。こんな日に出かけるのも気分がのらないし、買い物は明日にして……。

「……明日は、ダメ」

 レモネードのグラスを食卓を兼ねたローテーブルに置き、史織は呟きながらクッションに腰を下ろす。

 明日は火曜日。泰章に会える日だ。

 先週から、なにかが変わる予感でドキドキしていた。それだから心が落ち着かないのだろうか。だが明日が楽しみというのなら、気持ちはもっと明るくなっているはず。
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