クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 これはこれで面白いから、このまま放っておこうという気持ちにもなってきた。ここまで異性にうつつを抜かさずに真面目に生きてきたデーセオという男なのだから、そうやって手紙のやり取りを楽しませてやる時間くらいもたせてもいいかな、と思ってもいた。

「ティメル。その、返事を書きたいのだが」

 こうなることもティメルは予想済みだった。もちろん、事務的な便箋と封筒ではなく、プライベートで使うようなそれらを用意していた。

「準備してあります。そちらの二段目の引き出しに」

 デーセオが言われた通りに机の引き出しを開けると、仕事用とは別の便箋を見つけた。シンプルな色合いでありながら、地味になり過ぎていないし、何よりも堅苦しくない。
 机の上に便箋を広げ、そこに羽ペンを走らせようとするデーセオなのだが、そのペンは止まったままである。ティメルも不思議に思い、そのペンの行き先をついつい見守っているのだが。

< 119 / 318 >

この作品をシェア

pagetop