クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「おい、ティメル……。」

 そう名前を呼ばれた時、ティメルは嫌な予感しかしなかった。そしてこの嫌な予感というものはたいてい当たるものだから不思議である。

「何を書いたらいいんだ……」

 便箋から顔をあげたデーセオと目が合ってしまった。目を逸らしたいのだが、この状況で目を逸らすということは非常にわざとらしい。むむむと唸りながら、ティメルもデーセオをじっと見ていた。そして、深く長くため息をつく。

「デーセオ様、屋敷に戻りましょう。それが手っ取り早いかと」

「嫌だ」

「そのような、子供のような我儘をおっしゃらないでください。デーセオ様が屋敷に戻れば全てが解決するのです」

< 120 / 318 >

この作品をシェア

pagetop