クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「聖女様になれなかった元聖女候補たち。力を失っても幸せに生きている方たちを、私はたくさん知っています。どうか、あなたもその一人になってください」

 彼女はレーニスの両手をそっと握った。
 聖女様になれず、力を失った聖女候補。そういった女性たちをたくさん見てきた彼女だから口にできる言葉。そして、彼女から紡がれた言葉だからこそ、それがレーニスを励ましてくれる。

「あ、ありがとうございます。この御恩は……」
 とレーニスが言いかけると、侍女頭はゆっくりと首を横に振る。

「レーニス。あなたが幸せになること以外、私への恩返しの方法はありませんよ」

 目尻を下げて、口元に笑みを浮かべる侍女頭。

「はい」
 レーニスは力強く頷き、握られた手にぎゅっと力を入れた。

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