クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 触れているわけでもないのに、彼女が隣にいるというだけでそこから熱が伝わってくるような感覚だった。それを誤魔化すかのように、レーニスが淹れてくれたお茶を手にする。ゆっくりと口元まで運び、時間を稼ぐかのように口に含む。

「ああ、美味いな」
 デーセオは息を吐き出すかのように、その言葉を吐き出した。それくらい、自然に口から出てきた言葉。

「本当ですか? お茶の淹れ方もサンドラに教えてもらったのです」
 褒められて嬉しくなったのだろう。レーニスの頬はほんのりと色づき始めていた。

「ああ、そうだレーニス」
 彼女を前にすると言いたいことがたくさん浮かんできた。次から次へと伝えたいことはあるはずなのに、彼女を前にするとうまく言葉にすることができない。だから、じっくりと頭の中で考えてから言葉を紡ぎ出す。

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