クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「まあ、素敵ね。きっと赤ちゃんもお兄ちゃんに会えることを楽しみにしているわね」

 男の子の後ろには、お腹の大きな女性が、柔らかな瞳でそこにたたずんでいた。レーニスはそっとその妊婦に駆け寄り。

「この子に祝福を」
 とお腹の子に声をかける。

 ありがとうございます、と彼女は頭を下げた。それはレーニスの聖なる力による祝福の祈り。これから生まれてくる命が、無事に育まれますように、という。
 こういった祈りは、神殿にいたときも捧げていた。
 新しい命、希望の命。これから生まれてくる全ての命が、平等に幸せになれますように、と。

「レーニス。名残惜しいところではあるが、暗くなる前に戻るぞ」

 いつもの口調でそんなことを言っているデーセオなのに、なぜかその顔が優しく見えたのがレーニスにも不思議だった。
 帰りも同じようにデーセオに抱きかかえられて飛竜に乗る。
 背中から感じる彼の体温が、じんわりとレーニスの全てを包み込んでくれるようで、なぜか心がほっこりとした。
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