クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 初めて気持ちが通じ合った、そんな気がしたから。

「レーニス」
 デーセオが優しく妻の名を口にする。
「その、君からそんな風に思ってもらえるとは思ってもいなかったから、その、嬉しいんだ」
 はい、とか細い声が聞こえる。まだ、涙は止まっていないのだろうか。
「レーニス。だから、その、泣かないで欲しい」

「無理です。だって、嬉しいから……。嬉しすぎて、涙が止まりません」
 デーセオはレーニスの背にそっと手を回して、その背を優しく撫で始めた。レーニスはその仕草に驚いたのか、やっと顔をあげてくれる。目が合うと、すかさずデーセオは彼女の唇に自分のそれを重ねた。

「んっ。き、急に、な、何をなさるんですか」

「ほら。驚いて、涙が止まっただろ」

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