クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「レーニス様が祈りを捧げた民たちは、仕事に恵まれたり、子供に恵まれたりしているようです。今は、とても幸せでレーニス様に感謝している、と」

 レーニスはその赤い目を大きく見開いた。ティメルが言った通り、彼女は神殿に訪れた人、分け隔てなく祈りを捧げていた。他の聖女や聖女候補たちは、お金にならない人間を見ると、それとなく断っていた。だが、わざわざ神殿に足を運んでくれた民たちを何もせずに帰すことに気が引けていたレーニスは、それとなくその民たちを呼び寄せて、簡単に祈りを捧げていた。簡単に、というのは、やはり時間的な制約な関係で。それでも民たちはレーニスに深く感謝をしていた。なけなしの金貨を渡そうとする者、食べ物を渡そうとする者、綺麗な布地を渡そうとする者。お金が無い民たちは、そうやって何かしらレーニスに感謝を伝えようとしていた。レーニスはそれの半分だけ受け取って、半分は民たちに返した。きちんとした祈りではないから、という理由で。

「あなたがお金でパエーズ卿に売られることを知って、急遽、我が主が割り込ませていただきました。レーニス様を養子にされることも考えましたが、そうなると別に嫁ぎ先を決める必要がある。ですから、妻に、と」

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