クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「話はそれだけか?」

「あ、はい。旦那様に御礼を言いたかったので」

「御礼、そうか」
 何も礼を言われるようなことはしていない。彼女を手に入れたのは自分自身のため。

「悪いが、このように私にはまだ仕事が残っている」

「あ、はい。気付かず申し訳ありません」

「いや」
 デーセオだって謝ってもらいたいわけではない。できることなら、彼女とこうやって言葉の駆け引きを楽しみたい。だからこそ、危険なのだ。彼女と共にいることが。

「では、失礼いたします」
 事務的に頭を下げたレーニスが部屋を出て行った。それを見送ると、デーセオは彼女が準備したお茶に手をつけた。
 少し冷めてしまったそれではあるが、心温まる味がした。
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