クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 結婚式の夜といえば初夜。少し無知なところがあるレーニスだって、それくらいのことは知っている。だが、閨事の知識はと問われると、無いかもしれない。よくわからない、が正解。
 だが、彼はここに来ないだろうと勝手にそう思っていた。夫婦の寝室、と言われているその部屋に移動してきたのは今日であるけれど、恐らくこの広い寝台の上で、寂しく一人で眠りにつくだろう、とレーニスは思っていた。
 だから、レーニスが寝台に横になってうつらうつらと眠りの世界へと誘われていたときに、この部屋に誰か入ってくる気配がしたのは意外だった。

「レーニス、眠っているのか?」

「あ、旦那様」
 ごそごそとレーニスは身体を起こした。だが、この部屋は真っ暗で、なんとなくでしかその彼の姿を捉えることしかできない。

「今日は疲れただろう」
 ぎしりと寝台が沈んだ。

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