クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 レーニスがここへ来た初日にデーセオと顔を合わせてから、今日というこの日まで、その間レーニスは彼の姿を見ることができなかった。仕事が忙しいという理由ではあるのだが、食事の時間くらいはと思ってもそれすら合わない。だから、会えない。今、三日ぶりに彼と顔を合わせたところでもある。

 そんな顔を半分隠したような大きな男と、聖なる力を失った元聖女候補の変な結婚式。それでも祝ってくれる人たちがいることは素直に嬉しいと感じているレーニスだが、隣にいる夫となった人物は、それでもその顔を見せてはくれない。逆に、ここまで頑なに隠されてしまうと、絶対に見てやるという強い気持ちが沸き起こるのはなぜなのだろう。

 この領主さまの結婚式ということだけあって、この領全てがお祝いの雰囲気に包まれていた。城内ではたくさんのご馳走が振舞われ、恐らくデーセオの関係者たちが、次々とやってきては挨拶をしていく。この城に訪れることのできない民たちも、浮かれモードで飲み食いをしている。それは、デーセオの結婚ということもあり、民たちにも酒や料理が配られたからだ。

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