偽装結婚の行く末
軽くメイクをしていざ戦場へ。
さすが高級ホテル、品数からして違う。
これは長い戦いになりそう。


「来週美優の実家行くつもりだけど、お母さん家にいる?」


プレートに好物ばかりたくさん乗せてそれを頬張る。
すると口にいっぱい食べ物が入ってる状態で話しかけてきた。


「できれば律も一緒にいてほしいけど忙しいかな。そろそろインハイ予選始まるだろ」

「えっと……結婚の挨拶ってこと?」


飲み込んで首を傾げると昴は頷く。
……本当に結婚する気なんだ。分かってるけど言葉にしたら尚更実感するっていうか。


「なーんで照れてんだよ」

「うるさいってば、からかうのやめてよ」

「美優のオーバーリアクションが見たくてつい」

「オーバーじゃないし、ありのままの反応ですけど」


反応がみたくていじるなんて性格悪いのは相変わらず。
さらにあたしの言葉ガン無視した上に、人の皿から一品奪っておいて「あ、これ美味い」なんて言ってる。
あ、それ私が食べようと思ってたローストビーフ!


「人の話聞いてます!?」

「大丈夫、要点は聞いてる」

「なにそれ、ムカつく。あたしのローストビーフ食べたし。
って、なんで笑ってんのよ」

「ふてくされた顔もいいなと思って」


怒ってるのに、昴は頬杖をつきながら余裕の笑み。
褒めればいいと思ってんでしょ、無視してやる。

だけどじっと見つめられたら笑っちゃったから、ダメだ敵わないと悟った。
まあ、あたしたちらしくていっか。
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