偽装結婚の行く末
二度寝して起きると、日は登りきって昼前。
先に起きてた昴は隣で寝そべりながらスマホを見ている。

起き上がろうとして喉に違和感を覚えた。
あー、最悪。声ガラガラじゃん。


「……あー」

「なんだよ」

「声が枯れてる。最悪」

「昨日イビキかいてたもんな」


昴のせいと思って睨んだら違ったらしい。
最悪、婚約者の前でイビキかくなんて女として終わってる。


「は!?嘘でしょ」

「マジ、地響きみたいなイビキだった」

「起こしてよ……」

「今度動画撮るわ」

「最悪……」


萎えてないみたいで良かった。
でも油断しすぎた、気をつけないと。


「心配しなくても、余程のことがない限り嫌いにならねえから大丈夫」

「余程のことって?」

「……そうだな、おむつ替えたりしてる時点でそれ以上はねえな」


浮気とかそういう系と思ったらシモの話かよ。
ホテルのスイートルームで会話する内容じゃない。


「はあ、ロマンチックの欠片もない……」

「ロマンチックな朝をお望みか?キスで起こすところからやり直してやってもいいけど」

「結構です、てかお腹空いた」


まあ、これまでと態度をまったく変えないところは昴らしい。
あたしはちょっと意識してるから平気な顔しつつ内心どぎまぎしてるけど。


「ホテル内のレストラン行く?ビュッフェスタイルだって」

「は?絶対行く、マジで空腹状態だから元取れるわ」

「美優もロマンチックと程遠いこと言ってっけど」

「今は色気より食い気なの」


秒速でベットから抜け出して支度を始める。
昴は「なんだそれ」と言ってたけど振り返ったら笑ってた。
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