偽装結婚の行く末
イライラを抑えるために肉を食べて酒をたくさん飲んだ。
とにかく気を紛らわせたくて昴に「なんか話して」と言ったら仕事の話をしてくれた。

昴は10代で起業して、28歳にして年商5億を超える会社の社長だ。
アプリ開発を中心とした事業をしてるらしい。
いわゆる『Webエンジニア』ってやつだ。

でも難しいビジネスの話じゃなくて「あそこの社長は実はヅラだ」とか笑えるしょうもない話をしてくれる。

頭が良くて器用で、口が悪くて変わってる。
こんな男があたしにとっての初恋の人だってことは……口が裂けても言わない。


「さて、そろそろどうするか決めた?」

「……なんの話?」

「はぁ?だから、偽装結婚の話」

「んー……100万ねぇ」

「頼むよ美優(みゆ)、悪い話じゃねえだろ?」


社長のくせにその口調は人に頼む態度じゃない。
それに、100万はむしろ貰いすぎな気がする。

でも、お金は必要なのは確かだ。


「分かった、半年間だけね。で、何すればいいの?」

「半年間オレの家で生活して」

「え?」
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