僕らは運命の意味を探していた。
「あきは、今日一日過ごしてみてどうだった?」

「んー……。正直かなり疲れた、かな。慣れない環境で、これだけ動き回ったから。疲労感が凄いの。マー君は?」

 僕はあきの問いかけの後、自分の状態について考えてみた。

 疲労感がないと言えば嘘になる。でも眠れるほどの疲れを感じていないのが現状だ。

 流石に睡眠時間は必要だが、すぐにできるかと言われれば、「はい」とは言えない。
僕はその旨を伝えると、あきは困ったように笑った。

「確かに。今日のマー君は幼き日の君だったね。何か気になるものを見つけたら、好奇心に負けてすぐに走り出しちゃうんだから。マー君も子供だよね。」

「僕がか? なんで?」

「その好奇心を忘れない所。ずっとそんな感じだもん。」

 確かにそういう角度から見れば子供なのかもしれないが、そんな人どこにでもいるような気が、僕にはした。

「あんまりいないと思うけど……。」

 あきは、呆れたように僕を見て言った。

「別に僕はそう思われてもいいけど。」

「えっ、いいの?」

 僕は驚いた様子のあきに、白い歯を見せて言った。

「ああ。自分らしさを持つことが、一番『人間』やってるって事だからな。」

 僕は空を見上げながらそういった。

 語りたい事があった。伝えたい考えがあった。でもそれを今、口に出す雰囲気ではないような気がした。

 言いたかった事を飲み込んで、僕らは笑顔を浮かべながら、平和的な雰囲気を醸し出していた。

「……寝ちゃったな。」

会話の間、二人が合わせたように静かになった。その間にあきは眠っていた。

 あきは、僕の肩に頭を乗せながら寝息を立てていた。僕は初めて安心という感情を持った気がした。

 この寝顔は簡単に拝めるようなものじゃない。色々な条件が重なって初めて見られるものだと、僕は思った。

 僕の傍が安心するのかな。それなら嬉しいんだけど。まあ、とりあえず目を覚ますまでこの態勢のまま、満天の星空でも眺めるとしますか。

 こんな穏やかな時間を過ごす機会はそう多くはないだろう。

 しかもこんな自然プラネタリウムを独り占めできる場面はかなり貴重だ。僕はこの機会を逃すまいと、その風景から目を離すことはなかった。

 長い一か月がスタートして、ようやく一日目が終わった。率直な感想としては、長すぎた一日だった。

 手掛かりをつかむまでの時間が掛かり過ぎたのが一番の理由だが、最悪の事態は避けられた。それだけが唯一の良い点だったと思う。

 方向性が固まったことで、夜明けからの行動パターンが絞りやすくなった。後は結果を出すのみ。

 そして半分以上の期間を残して、あの狂ったゲームマスターの泣き顔を拝見してやるのだ。

 僕らにこれ以上危害を加えないように、跪かせる必要もある。僕は憤慨に似た感情を持った。

 既に殺人ゲームの狼煙は上がっていた。今日は肩慣らしみたいなもの、本番は明日からである。

 あとはどこに行くか。

 皆と被らない所に行くのが筋だ。

 未だこの世界の地理を把握していないから、手こずるだろうが、どうにかして成果を出して脱出に貢献したい。

 僕は目線を上に固定したまま微笑んでいだ。

 月と星々が僕らを応援しているように見えた。敵の創作物に応援されているように見えるってやっぱり疲れてるのかもな……。

 なんにせよ、日の出とともにスタートだ。それまでは英気を養っておこうと思う。

 過酷な日々を生き抜くために、僕は全身全霊で理不尽に対抗する。
< 15 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop