僕らは運命の意味を探していた。
二章

開始

僕は快晴の空模様の下を、重い足取りで歩いていた。

 時折、吹き出す汗を制服の袖で拭いながら、少しずつ歩みを進めている。隣から聞こえる軽やかな声を受け流し、のどかな田園風景を眺めていた。

「よろしくな。頼りにしてるからさ、助けてくれよ。」

 快活な調子で言った彼女は、昨日とうってかわって、僕を受け入れてくれているようだった。

「あ、ああ……。」

 そんな情けない返答しか返せなかった。明らかな差を感じる今、これが僕の精一杯だった。

 どうして、そうなったか。それは、今日になって急激な感情の方向転換を見せたからだった。

 それが気になって僕は勇気を出し、聞いてみることにした。

「ああ……、確かに昨日は酷い態度だったかもね。それはごめん。あまりにも唐突な事だったから、混乱してたんだと思う。でも、悪気は無いんだ。」

 言いながら眉尻を下げた。

 恐らくだけれど、解散した後に一人で反省会していたのかもしれない。そこで彼女自身の行動を省みた結果、明るく振舞おうとした。そんな予想を勝手していた。

「そっか。それを聞けて安心した。」

 僕は徐々に、胸の重りが少なくなっているような気がした。

 それからは適当に雑談を交わしていった。やはり出会いたてだからか、会話にぎこちなさが生まれてしまっていた。

「香川さんは、行きたいところとかあるのか?」

 僕らは、行先を決めずにとりあえず歩き出して、その場のノリで決めようという事にしていた。

 だから、現状無意味に歩いているだけ。とりあえず、決める第一歩になればいいやくらいの気持ちで、僕は話を振った。

「香川じゃなくて、紗南でいいって。行きたいとこか、そうだな……。商店街とか行ってみようよ。」

 昨日、外で活動していた紗南は、地理的な情報は持っているようで、幾つか探したい場所の候補があるようだ。

「僕さ、全然どこったらいいかとか分からないから、案内よろしく。」

「うん。任しといて!」

 紗南は胸を張り、自信に漲った表情を浮かべていた。まだ一日しか、この世界で過ごして居ないのにも関わらず、どこからその自信は湧き出してくるのだろうか。

「昨日私、何も探さずに、地図書いてたんだ。」

 紗南の言葉を聞いて、彼女が胸を張っている理由が分かった。

 それは、僕が今まで持っていた紗南のイメージが、根底から覆る瞬間を訪れさせた。

 昨日、一人飛び出した紗南は闇雲に探す選択肢を取らず、後々必要になる『地理』をひたすらかき集めた。

 どこにどんな建物があって、どんな危険が潜んでいるか。一日で全てを集めるのは厳しいが、全体像を把握するには十分すぎる情報だった。

 それがあれば、効率よく作業を進められること間違いなしだろう。

「誰かがそういう事をしないと、全員が困る事になるからな。だから、やったって訳。」
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