内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました

「見た目に合わせたのさ。それで千絵は、なんだって?」

「悠がどうしているか知りませんかってな。元気かどうかだけ教えてくださいってさ」

「ふぅん」

「俺が知る限りでは元気だと答えた」

 生存確認だけなのか?

 僕の心の声が聞こえたのか「それだけだ」と言って、仁は肩をすくめる。

 つまらないな。二年ぶりにやっと連絡してきて、それだけとは。

 まあそこが千絵らしいとも言えるけど。

「悪かったね、忙しいのに」

 仁を頼ったのは千絵だけじゃない。

 僕が家を出て間もなく、神林の弁護士が仁に会いに来たという。勝手に巻き込んで、仁にはすっかり迷惑をかけてしまった。

「気にするな。シルKUはうちの派遣社員を大事にしてくれるお得意さまだ」

 シルKUか。
 僕が父に渡した退職届は保留にされて、秘書の岡安を通じ、ひと月間の研修にすると伝えてきた。

 父がそうしたくても無理だ。
 叔父や他の役員が黙ってはいないだろう。

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