内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました

 ひとまず滋賀に帰った。

 不甲斐ないが、私にはなにもできないから。

 弁護士さんには住所は教えられないと突っぱねたけれど、連絡先の交換だけはした。お互いに悠の居場所がわかったら報告すると約束をして。

 いずれにしろ私には知りようがないので、弁護士さんの連絡を待つだけだけれど。

「晴太、お散歩行こうか」

 散歩という言葉に反応して晴太がキャッキャと笑う。
 晴太は散歩が大好きだ。外の風が気持ちいいんだろう。

 その間にと洗濯機を回し、早速外に出た。

 するとアパートの外に、家具屋さんのトラックが止まっていた。

 ベッドを運び入れようとしている。

 ふと見上げれば、空いていたはずの隣の部屋の窓が大きく開け放っている。三日ばかり大阪に行っていた間に、誰か引っ越ししてきたらしい。

 晴太をベビーカーに乗せながら、なんとなく様子を見ていると、窓からひょっこり男性が顔を出した。
 マスクをしているからよくわからないけれど髪型と服装から若い男性らしい。

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