内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 噂通り、義理チョコならぬチョコレートの香りがするという義理入浴剤もあり、『いつもありがとう』の言葉を添えた三百円くらいのものから、香水もあった。

 自分へのごほうび用や友チョコか、入浴剤とハンドクリームのセットもある。

 後でなにか買ってみようと、のんきに構えていたのも束の間。天気もいいおかげもあってか人通りも多く、瞬く間にお客さんでいっぱいになる。

 悠と顔を合わせたらどうしようなんて心配は、慌ただしさの中に消えていた。

 そしてひと息ついた、午後二時頃だった。

 いつの間に来たのか、イベントスペースから離れたところに、悠の姿があった。

 彼は社員と立ち話をしている。

 こうしてみると副社長っぽいなと思ってこっそり見ていると、悠のところに、ひとりの女性が歩いていった。

 女性はイベントで買い物をしたらしく袋を下げている。

 となると、ここの社員ではないのかな?

 ふいに、近くにいたの女性が言った。

「あ、あの人、副社長の……」

 え? 悠の?

 別の女性が「ああ、噂の人か。頭取のお嬢さんらしいわよ」とささやいた。
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