内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました


 そして――。
 何かと忙しく、うだうだする間もないままイベントの日を迎えた。

「こんにちは」
 良かった。知った顔がある。
 普段、受付にいる派遣社員の女性だ。

「ご苦労様です。今日はかわいらしいじゃないですか」
「あはは。ちょっとがんばりました」

 いつものラフ過ぎる服装では迷惑をかけてしまうやもしれず、今日はスカートを履いている。
 ダウンのベストを着た山ガールのような恰好だけれど、いくらかましなはず。

 同僚のおしゃれ女子、ミーちゃんのおすすめに従い、寒さ対策でニット帽も被ってみた。

「いいですよ、もともと美人さんだからなにを着ても似合う」

「またまたぁ」

 ふふっと笑い合う。
 私の仕事は購入したお客様のくじ引きで当たりを引いた人にお花をプレゼントする係。一等は五千円相当のアレンジメント。二等は少し小さめ、三等は保水キャップに刺した蘭の花だ。

 今のうちに、販売している商品を覗いてみる。

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