地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます!
 「魁吏くん、後ろ・・・!」
 今からでも遅くない、もっと足の速い新しい子を見つけて・・・。
 いやダメだ、私以上に地味な女なんているわけがない。
 でも、もうすぐ追いつかれちゃいそうだし・・・。
 ああきっと、これで負けたら私はあの黒江魁吏を負けさせ、チームの足を引っ張った女としてこれから先色んな女の子に恨まれながら高校生活を送るんだろうな。
 「・・・・・・チッ」
 「え?ちょ、うわぁ!?」
 いつもの魁吏くんお得意の舌打ちが聞こえたかと思うと、突然体が浮くような感覚に襲われた。
 見ると、足が地面から離れている。
 そして魁吏くんの腕は私の背中と膝裏にがっしりと回されていて。
 右の頬には、硬い胸板が当たっている。
 え、なにこれ。
 え・・・・・・?
 ・・・・・・お姫様抱っこぉぉぉおおお!!??
 「「「「「「ギャーーーーー!!!」」」」」」
 私が状況を理解するのと、観客全ての魁吏くんファンから悲鳴があがるのは同時だった。
 え、あの魁吏くんが、お姫様抱っこなるものを?
 可愛い女の子相手なら百歩譲ってわかるとして、よりによってこの私?
 いや、以前一回やられたことはあるけど。
 あのときは、私が熱出してて意識が朦朧(もうろう)としてたから。
 魁吏くんとの距離が完全にゼロになったのと、未体験のことをされているのと、人前でのお姫様抱っこによる羞恥心(しゅうちしん)
 全てがぐるぐると頭の中で渦巻いて混乱して、自然に顔に熱が集められる。
 「魁吏くん、一体これは!?」
 「・・・うっせぇ、黙ってろ」
 「う、うん・・・」
 黙ってろと言われれば、黙るしかない。
 素直に私は魁吏くんの指示に従った。
 ・・・うん、そうだよ。
 これはきっと、私のあまりの足の遅さと体力のなさに絶望して魁吏くんが取った行動なんだ。
 効率重視。
 全ては、チームの勝利に貢献するため。
 その証拠に、さっきよりも断然走るスピードは速い。
 魁吏くんは、後ろの選手を引き離す。
 後方からは、さっきの人の「そんなのありかよ!?それにしてもイケメンだな!?ちくしょー!」という声が飛んでくる。
 そしてそのまま、悲鳴の中私たちはゴールテープをきった。
 な、なんだかどっと疲れた。
 体育委員の女の子に促されて、応援スペースの方に戻る。
 その子の視線が痛いほど突き刺さったし、応援スペースに行く途中もずっと人に見られてて。
 チームの戦犯とはならなかったけど、違う意味で明日からの学校生活が恐ろしい。
< 77 / 154 >

この作品をシェア

pagetop