地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます!
 里穂にシェアハウスのことを伝えたときに言ってた血祭りとやらが起こらないといいんだけど・・・。
 今は、祈るしかない。
 それに、さすがに体育祭の競技中の接触だけで女の子たちも目の敵にしないでしょ。
 接触だけ、って言えるレベルかの接触かどうかはおいといて。
 でも私の願いは数秒後に木っ端微塵(こっぱみじん)に打ち砕かれることになる。
 「借り物競争第四走の一着は2年A組の黒江魁吏さん!さてそのお題の内容は・・・?」
 とんでもない男子体育委員のアナウンスの声がグラウンド中に響き渡って、私は勢いよくゴールの方を振り返った。
 見ると、魁吏くんよりも一回り大きい男の先輩が魁吏くんの手から紙を奪って内容を確認している。
 え・・・まさか読み上げる気じゃないよね・・・?
 そんな、地味なやつってお題が読まれちゃったら私の心が死ぬ。
 あ、でも逆にチャンスかもしれない。
 魁吏くんが私のことをなんとも思ってなくて、地味だからっていう理由で選んだって女の子たち全員が知ったら血祭りなんて起こらないんじゃ・・・?
 むしろ、哀れみの眼差しを向けられるかも。
 それもそれで嫌なんだけど。
 でも、これはきっと神様が私にくださった救済。
 さっきの私の祈りが届いたんだ。
 ええい、この際私の心が死ぬとかっていうのはどうでもいい!
 むしろ、どうぞ大声で読んじゃってください!
 「なんと!『一番大切な異性』です!!」
 ・・・・・・へ?
 男子体育委員の人の声からは、若干の興奮がうかがえる。
 うん、今なんて?
 いちばんたいせつないせい。
 イチバンタイセツナイセイ。
 それって、地味な人って意味であってる?
 やばい、脳が全然言葉を理解してくれないぞ。
 私って、こんな頭悪かったっけ?
 「「「「「「「ギャーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」
 さっきのお姫様抱っこのときよりも大きな悲鳴が、ようやく私を現実に連れ戻す。
 ・・・・・・一番大切な異性!!??
 え、え、それは、えっと、どういう・・・?
 キャパシティを軽く超える情報の濃度に、脳がバグっている。
 「嘘、でしょ・・・?」
 「さっきの女の名前は!?」
 「同じクラスの桃瀬っていう子!?」
 「そんな・・・魁吏・・・」
 怒鳴る人、現実を受け入れられない人、私の個人情報を特定しようとする人。
 その反応は、実にさまざまだ。
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