地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます!
 次の騎馬戦には晶くんが出るから、当然晶くんファンの子たちの応援にも熱が入る。
 案の定、応援スペースの最前列という特等席は熱烈な女の子で取り合いになっていた。
 端っこに移動したのと晶くん効果もあってか、少し視線が落ち着いたような気がする。
 選手入場の音楽が流れるとともに、観客席から黄色い歓声と拍手。
 晶くんが出てきたのかな。
 ここからじゃ、よく見えないや。
 ・・・晶くんの応援、ちゃんとできなかったな。
 できるなら、したかった。
 でも、今の私はそれどころじゃない。
 「ちょっと落ち着いた?絢花」
 「う、うん」
 里穂が声をかけてくれる。
 親友の声は、安心感がすごかった。
 「いつの間に、黒江と仲良く・・・っていうか、親密になってたの?」
 親密・・・。
 そんなに、親密だったのかな。
 はっきりとしたきっかけがわからない。
 つい最近まで、地味子地味子って罵られていたような気もするし、近頃はそんなに言われてなかったような気もする。
 ・・・ただ。
 どこかで転機があったとすれば、それは郁弥くんと話しているところを見られていたあの日だと思う。
 あの日の魁吏くんの行動の真意は、今でもよくわかっていない。
 「シェアハウス中に何かあったとか?」
 「わからないよ・・・」
 黙り込んだ私の顔色をうかがいながら、里穂はゆっくり喋ってくれる。
 気を遣わせちゃうなんて、情けないな。
 そう思いながらも、私は小さく頭を振った。
 「あの・・・シェアハウスってどういうことでしょうか?」
 「「あ」」
 ずっと喋っていなかった椿ちゃんが、おそるおそると言ったように口を開いた。
 次に、私と里穂の声が重なる。
 しまった。
 普通にシェアハウスのことを話していた。
 「ごめん、絢花。つい・・・」
 「・・・ううん、椿ちゃんなら大丈夫」
 「?」
 椿ちゃんは、首をかしげる。
 ・・・椿ちゃんになら、言ってもいいよね。
 決心して、私は椿ちゃんに向き直った。
 「実は・・・私、魁吏くんと晶くんとシェアハウスしてるの。まあ、事情は色々あったんだけど」
 「えええ!?・・・あ」
 思わず、といった感じで椿ちゃんは驚きの声をあげたあと、すぐに周りを気にして口を自身の手で押さえた。
 「ご、ごめんなさい・・・大声、出しちゃいました・・・」
 まあ、普通はこういう反応になるよね・・・。
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