地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます!
 そして、全校生徒の視線が一気に私に集中するのを感じる。
 目線の見えない圧で、押しつぶされてしまいそう。
 そのどれもが、現実味がなさすぎてどこか遠い世界のことに思えた。
 「すごい悲鳴ですね〜、黒江さん!何か、一言どうぞ!」
 男子体育委員が、ずいっと魁吏くんにマイクを向ける。
 魁吏くん、なんていうんだろう・・・?
 この場で、『お題を読み間違えていた』とか言ってくれたら・・・!
 むしろ、読み間違いであれ・・・!
 みんなが、静まって魁吏くんの次の言葉を待っている。
 魁吏くんは一度小さくため息をつくと、口を開いた。
 「桃瀬に、何かしたら許さねぇから」
 ああ・・・終わった・・・。
 再度、全ての生徒が騒ぎ出す。
 「もう、無理・・・」
 「もしあの子と魁吏くんが付き合ったら、私、生きていけない・・・」
 「・・・なんなのよ、あの子・・・」
 「よく言ったぞ、黒江ー!」
 「ヒューヒュー!」
 女の子はショックで泣き出したり、鋭い目で私を睨んだり。
 それとは正反対に、男子生徒からは歓声や口笛が飛んでくる。
 その混乱のど真ん中にいる私は、へなへなとその場に座り込んでしまった。
 なんで、こんなことに。
 魁吏くんの一番大切な異性が私・・・?
 今、私はこれまでの人生で一番パニックになってると思う。
 震える足に(むち)打って里穂と椿ちゃんのところに戻る。
 「た、ただいま・・・」
 「あ!絢花ちゃん!」
 「絢花、平気?どういうことか説明できる?」
 「できないよ・・・」
 二人とも、心配そうに出迎えてくれた。
 なんとか笑顔を作って、二人と話す。
 その間も、他の人の視線が鋭く全身に突き刺さる。
 「うぅ・・・黒江先輩・・・」
 「大丈夫?ミナ」
 「私たちは黒江先輩のただのファンだったけど、ミナはちゃんと恋してたもんね・・・」
 例の緑のはちまきの女の子のうちの一人が号泣していて、他の子がミナと呼ばれた子を慰めている。
 その声が、やけにくっきりと聞こえてきて私の混乱を増幅させるとともに言い表しようのない罪悪感が胸の中で膨らんでいく。
 ・・・やっぱり、魁吏くんは人気だから、悲しむ人も多いんだよね・・・。
 魁吏くんは、どういうつもりで私を選んだんだろう。
 里穂と椿ちゃんのはからいで、私たちは応援席の一番前からグラウンドの隅っこのほうへ移動した。
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