やわく、制服で隠して。
散々二人で泣いたあと、深春が「まふゆを愛してる。姉妹だからじゃない。まふゆに全部あげたい。私の全部。」って言った。

私は頷いて、深春にキスをした。
辺りはすっかり暗くなっていて、夜が来た。
世界の片隅にこっそり隠れるみたいにしてキスをした。
何度も何度も好きだって言い合った。

深春が私の頬に触れて、もう一度短いキスをして、言った。

「まふゆ。二人で死のっか。」

「え?」

私の声はひどく掠れていて、私自身は「え?」って言ったことは分かるけれど、その音が深春に届いたかは分からない。

深春が自分の小指と私の小指を絡ませた。
そこに赤い糸なんて見えないけれど、私達は確かに強い糸で結ばれている。

「一緒に死んで欲しい。駄目かな?」

「死ぬの?」

「うん。」

「どうして?」

深春はゆっくりゆっくり、“死のう”と言った理由を話した。
人生の終わり、仄暗い話をしているのに、深春の声は不思議と暗く聞こえなかった。

「私達さ、与えられた命も出会ったことも、仕組まれてたじゃない?」

「そうだね…。」

「でもね、まふゆを選んだのは私の意志なんだって、私の意思で、本能でまふゆに惹かれたんだって、それだけは譲りたくない。」

「もう…。照れるじゃん。」

「ふふ。…深春のお母さんはさ、絶対に私達のこと認めないと思う。“恋人”だなんてもちろん、“姉妹”としても…。」

「うん…。」

「私の親はきっとその逆で、私がまふゆに執着すればするだけ喜ぶだろうね。その分、母さんは深春のお母さんに執着し続けてさ。でもね、私、この恋まで仕組まれた物だなんて思いたくない。」

絡ませていた小指をそっと解いて、そのまま手を繋いだ。
私達の現実は姉妹だけど、二人の間では恋人同士で、それはもう覆せない。

「私は何があっても一生まふゆのことが好きだよ。絶対に変わらない。うちの両親も、まふゆのお母さんも、本当の恋をしていたのかもしれない。でもそのやり方は間違ってた。まふゆのお母さんは被害者でもあるけど…。」

「でも選んだのもママだから…。」

「うん…。私とまふゆの命が仕組まれて、悪い感情に遣われた“駒”だったのなら、最期は自分で選びたいの。」

「最期の反抗期だ。」

「あはは。そうかもね。…私達の恋は世間にはきっと認められない。擁護してくれる人もいるかもしれないけど、法律だって許してくれない。それなら一緒に終わりにしたいよ。この先が暗い未来なら。このまま二人で…。」
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