やわく、制服で隠して。
朝は当たり前にやってきて、当たり前みたいにママはおはようも言ってくれなくて、パパは困った顔でコーヒーを啜る。

私の分の朝食は無い。
元カレがこれから先の未来を脅されていることが因果応報なら、私への罰は、壊れた家族だ。

「いってきます…。」

「まふゆ。朝ご飯、食べないのか?」

「…何を?」

鼻で笑った私に、パパは悲しそうな顔をしたけれど何も言わなかった。
パパにそういう態度を取ってしまった自分自身に傷ついた。パパはなんにも悪くないのに。
けれど、あの状況であの言葉は酷い冗談だ。

やっぱりアルバイトでもしようかなぁなんて考えながら家を出た。
毎月貰っている今月分のお小遣いも、もうすぐ底を尽きる。そのうちお昼ご飯代も、夜ご飯も貰えなくなるかもしれない。

パパがそんなことはしないって分かっている。
だけどもう、私だって意地になっていた。
結局親に頼らなきゃいけないクセにって、ママに思われたくない。

あぁ、でも、学校の学費だって払ってくれているのは親で、寝る為に帰るあの家だって親の物だ…。

何も無い。私は何も持っていないのに、親に嫌われちゃった。
簡単にゴミ箱に捨てられるくらい、壊れたらもう要らないって思われるくらい。

鉛のように足が重い。考えなきゃいけないことは山ほどある。

言い訳みたいに、区切りをつけるように、「野外学習が終わってから」って思った。
七月、夏休み前に二泊三日の野外学習がある。

キャンプ場を借りて、飯盒炊飯をしたり、カレーを作ったり、夜は近くに借りている旅館でレクリエーションをしたりする。

二日目は班ごとに渡されたマップを見ながらハイキングをして、ポイントごとに先生達が設置したクイズを解いていく。
上位三班まで景品があるって先生が言っていた。

深春とは班が離れてしまったけれど、二日間も一緒に夜を過ごせるし、今の私には家に居るほうがずっと苦痛だ。

それが終わったら、これからのことを真剣に考えよう。
私だってもう要らないって言えるくらい強くなりたい。

そんな強さは悲しい物だけど、今の私にはその強さが必要だった。
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