青の先で、きみを待つ。
◇
私は屋上にいた。冷たいコンクリートの上で膝を抱えている横を、強い風が吹き抜けている。
すべてを……思い出してしまった。
現実世界でなにがあったのか、どうして私はここにいるのか。忘れていたほうが幸せだったのに。
「なにしてんの?」
屋上のドアが開く音と一緒に、蒼井が近づいてきた。
たしか私は橋本さんと裏庭で話していたはずだった。けれど芋づる式にするすると思い出してしまった記憶によって私は激しく動揺して、こうして午後の授業を受けずにここにいる。
「私、やっぱり現実世界でいじめられてたよ」
きっとそうだろうとは思っていた。でも、その相手まではわからなかった。
「私をいじめてたのは橋本さん。……ううん、橋本まりえだったんだ」
まりえは親友だった。大好きだった。けれど、ひび割れてしまった私たちの溝は元には戻らなかった。
「私はいじめられていた人を庇った代わりに、いじめを受けるようになったんだ。今だってそうだよ。橋本さんがいじめられているのを見てられなくて口を出して、それでまたひとりになってる」
「………」
「笑っちゃうよね。庇ったはずの橋本さんが現実では私のことをいじめてたんだよ? 本当に私ってバカすぎる……」
笑い飛ばしてしまいたいのに、今はとてもじゃないけれど作り笑顔もできない。