青の先で、きみを待つ。



――『前から思ってたんだけど、あかりってうざいよね』

市川さんを助けた日から私の地獄が始まった。

靴を隠されてプールに捨てられていたり、男子にゲームで告白されて笑われたり、毎日毎日苦しくて仕方なかった。

『ってか同じ空気吸ってんのも無理なんだけど。早く消えてくれないかな?』

私を否定する言葉の数々。それは言霊のように本当に自分が価値のない存在だと思えるほどだった。

『ねえ、市川さんもあかりのことがうざいよね? 普通にキモいよね? だったらちゃんと言わないと』

そして、助けたはずの人にまで傷つけられた。

『うざい、キモい』と市川さんはまりえの言いなりになっていた。きっと断ればまた自分がいじめられると思ったのだろう。

私の正義は間違っていた。今だって同じことを繰り返して、空回りばかりをしてる。

私はなにひとつ学んでないし、成長もしていない。

「私、ずっと市川さんを助けたこと後悔してた。あんなことを勢いだけでやるんじゃなかったって」

それからの日々なんて思い出したくもない。

嫌なことを散々言われて、学校が、友達が、目に見えるものすべてが敵になった。自分が透明人間になって、みんなから認識されなくなったらどんなに楽だろうと、そればかりを考えていた。


「蒼井はなんでずっと隠してたの?」

「なにが?」

思い出したのは、いじめのことだけじゃない。

学校にも家にも居場所がなくなって、頑張ったけれど、もう頑張れないと悟ったあの日。

私は一段、一段、噛みしめるようにして階段を上ってこの屋上にやってきた。


「ねえ、私がここで自殺したってこと、蒼井は知っていたんでしょ?」


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