青の先で、きみを待つ。
そのあと病院の医師や看護師によって、記憶障害がないかを確かめるための簡単な質問をされた。
自分の名前や年齢。お母さんの名前もはっきりと言えたことで、脳に異常がないことがわかった。
「どうして自分がここにいるかわかる?」
「わかります。学校の屋上から飛び降りました」
それを言うとお母さんはまた声を出して泣いた。
私の頭には白い包帯が巻かれていて、腕にもかすり傷が見える。多少の体の痛みはあるにしても、あの高さから落ちたのに骨すら折れていないことが奇跡だと言われた。
「もう少し落ち着いたら、カウンセリングの先生を紹介するね。とても親身になってくれる人だからなんでも相談するといいよ」
「いえ、あの、その前に聞きたいことがあるんですが……」
「なんだい?」
「私の他にもうひとり屋上から落ちた人がいますよね? 髪は明るくて背も高くて、同級生の男の子です。名前は蒼井翔也と言います」
あのあと彼はどうなってしまったのか。
私が現実に戻ってきたということは、おそらくあの世界は消滅してるはずだ。と、なると、蒼井も一緒に戻ってきた可能性も捨てきれない。
先生は眉を寄せて、深刻そうな顔をした。
「ああ、彼は――」
「……え?」