淡雪のように、消えていった。
翔の気持ち
*僕が消えたいと思った日

 僕は初めて“ダイヤモンドダスト”を見た。
 細かい宝石が自由に舞っている。スポットライトを浴びながら。なんて綺麗なんだ。

 さっき川に飛び込まなくて良かった。もし飛び込んでいたら僕は今ここにいなくて、この美しい風景を見る事が出来なかったんだ。

 長岡さん、ありがとう。僕を止めてくれて。正直、彼女が泣いた事に驚いた。中学の時、僕がペンケースとコーンマヨネーズパンを間違えて学校に持ってきた時に、大笑いした顔を見た事はあったけれど、それ以外は無表情で感情を表に出さないイメージで。こんなに取り乱して泣く人なんだとは全く思っていなかった。

 人が僕の為に、心を込めて泣いてくれたのは生まれて初めてだった。この短時間で“初めて”をいくつも経験した。もしかしたらこれからも沢山の初めてに出会えるのかもしれない。そして窮屈で苦しい世界から脱出出来るのかも。生きていれば。
 

 帰り道、僕は
 
 ――もう一度、今隣にいる子とダイヤモンドダストを見たい。

と思った。さっきダイヤモンドダストを見た後、すぐに僕は“ダイヤモンドダストが見られる条件”をスマホのネットでチェックしていた。

氷点下十度以下で晴れた日、風が無くて湿度が高いなどいくつかの条件が書いてあった。

 誘う時は、きちんと天気予報をチェックして、早朝が良いらしいけれど、早すぎて寒さで風邪をひかせてしまったらあれだから、少し明るくなってから待ち合わせをして……。で大丈夫かな? そして次は、温かいコーンスープとカイロを僕が彼女に渡そう。

そんな事を考えながら、それは伝えずに別々の道を進んだ。

 少したってから「あ、連絡先聞かないと待ち合わせ出来ないじゃん」と、彼女の連絡先を知らない事に気が付き、僕は急いできた道を戻り、彼女のいそうな方向に向かって走った。彼女は見当たらなかった。

 また明日も同じ時間、川に行ってみよう。
 会えるかな?

 
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