離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 そんな強さも、愛した人の娘を立派に育て上げるという使命感によるものだろう。

 私を施設に送ったり、自分の両親のもとへ送って女としての新しい人生を歩む選択肢だってあったはずだ。

 そうしなかったのは彼女が言うように、自分を犠牲にしてもいいと思うほど深い愛情を亡くなった夫に抱いていたから。

 犠牲、なんて言い方をした自分を恥じる。

 母が私に向ける愛情と、今も父に抱いている愛情は別種のもの。その愛に生きることのどこが犠牲だというのだろう。

「なんか、羨ましいな。お父さんもそんなに愛してもらえて幸せだよね」

 そのぐらい愛せる人と出会えたお母さんも幸せで、本当に羨ましい。

< 11 / 235 >

この作品をシェア

pagetop