離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 現に、今度は楓花の成長を見守るためにたちばなへ通わなければと言うお客様も少なくはなかった。

 こうして智秋は巧みな話術を駆使し、相手によって話し方や内容を変えることで若女将の印象を完璧に植えつけた。

 子煩悩な父親を演じ、淡々と新米の若女将を紹介したかと思えば、普段よりも近い距離で寄り添って妻を溺愛する夫眼差しを向ける。

 その切り替えの早さには私の方が翻弄された。

「やっぱり智秋って完璧すぎて変な感じがする」

「そう言うのは咲良だけだよ」

 義両親はもちろん、ほかの従業員もこんな智秋に違和感を覚えないのだという。

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