離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 もうそのぐらいにして! と心の中で叫んでも、智秋はお客様に妻を溺愛する夫ぶりを見せ続けた。

 顔から火が出るほど恥ずかしいが智秋の思惑も理解できる。

 この人は他人の好意を自分のものにするのが本当にうまい。顔のよさと口のうまさ、そして相手がなにを望んでいるか瞬時に察する勘が優れているからだろう。

 常連のお客様のほとんどは先代の頃からたちばなに宿泊し、智秋の成長を見守ってきた。血の繋がらない親戚のようなものだと思えば、こうして〝結婚した〟〝子供ができた〟という話題が喜ばれるのは想像に難くない。

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