吉良くんの弱愛なところ。
中学2年生のはじめあたりから卒業式まで、ほぼ2年間付き合っていた男の子。
学力がおそろしいほど同レベルのため、くされ縁で高校までいっしょ。
おかげで別れたあとも、クラスは別なのに、よく葛葉はわたしにちょっかいをかけにくる。
さっきも、ひとりで音楽を聴いている吉良くんをぼーっと眺めていたのに、うちの教室に乗り込んで来た葛葉が、わたしの視界を遮った。
慌てて反対側をぷいっと見やると、窓際の席だから、そこにあるのは白い壁。
仕方なくそのまま壁を見続けていたら、不審そうに葛葉に問われてしまったのだ。
「葛葉。わたしは壁だって愛する女になりたいの!」
ここまできたら、投げやり。
どうせ葛葉なら合わせてくれるから、とりあえずテキトーに言葉を紡ぐ。
「カナ、だいぶ頭おかしいこと言ってるけど気づいてるか」
「うわーん、葛葉がいじめてくる!」
「どこがだよ」