首取り様4
目の前に地蔵が立っているのだ。


その姿は人間そのものだったが、色は灰色の地蔵のままなのですぐにわかった。


女の顔をした地蔵は知らない相手なので、智子たちの仲間なのだとわかった。


地蔵はジッとこちらを見つめている。


こちらを見つめているのに、どこを見ているのかわからないような不気味な目元をしていた。


「どうするの」


春香の質問には誰も答えられなかった。


地蔵の素早さと、馬鹿力がさっき散々見せつけられていたことだった。


まともに戦って勝てるとも思えない。


「逃げろ!」


大輔が叫んで踵を返す。


それとほぼ同時に地蔵は動いていた。


大輔たちが逃げ出す方向を察知して、その前に立ちはだかったのだ。


さっきと同じ顔の地蔵が方向転換した先にいる。


大輔は思わず後ろを振り向いて地蔵が1体しかいないことを確認していた。


なんていう素早さだよ!


自分たちが振り向いている間に、その脇をすり抜けていたのだ。


大輔は自分の頬がひきつるのを感じていた。
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