彼は私を偏愛している
鈍感
「雛菜、おはよ」
「あ…頼廣くん…おはよう」
つい、目線をそらす雛菜。

「この前のことは、悪かった。ごめんな」

雛菜は頼廣に“亜舟とつり合うわけない”と言われてから、なんとなく頼廣を避けていた。

「ううん…私こそ、ついムキになったから」

「隣…いい?」
「あ、うん。どうぞ!」
「そう言えば、瀬里と未華子は?」
「瀬里ちゃんはサークルの合宿で、未華子ちゃんは彼氏さんとデートでサボり」
「そっか。
雛菜はサボったことねぇな!
……って当たり前だけど(笑)」

「一度、あるよ」

「え!?マジで!?」
「うん。前に亜舟くんのお仕事関係の人に騙されて、亜舟くんの情報を教えかけたことがあるの」
雛菜は簡単に説明する。

「━━━━そっか…
………そんな好きなんだ、彼氏のこと」

「うん…ずっと、想い続けてた人だから」

「そう…だよな……」


講義終了後、一緒に外に出た二人。

「雛菜はもう講義ないんだよな?」
「うん」
「じゃあ、付き合ってくんない?」
「え?」
「奢るから!」


「━━━━━━何、食いたい?」
「私は何でも……」
「じゃあ…駅裏にもんじゃの美味しいとこあるんだけど、どう?」
「うん、いいよ!」


「ん!美味しい~!」
「だろ?」
「うん!」
「あんまり知られてない、穴場の店なんだ!」
「へぇー!
そんな所に連れてきてくれてありがとう!」
微笑む雛菜。

「………」

食事が済み、外に出ようとする二人。
「雨だ…」
「結構降ってんなぁー」

「どうしよう傘…持ってない」

「雛菜」
「ん?
━━━━━━!!?」
頼廣は着ていたパーカーを脱ぐと、雛菜の頭にすっぽり被せた。

「プッ!!雛菜って、ほんと小せーよな(笑)
俺のパーカーん中、すっぽり入ってる」
「頼廣くん、これ…」
「俺ん家この近くだから、とりあえず俺ん家においで?
雛菜!走るぞ!!」

「え━━━━!!!?」
有無を言わさず、引っ張られた。

バシャバシャと雨を弾きながら、手を引かれ雨の道を走る。

「もう少しだから、頑張れ!」
そして漸く頼廣の自宅アパートに着いた。

「雛菜、大丈夫?」
「う、うん…」
「結構濡れたな…」
「頼廣くんのパーカー、びしょ濡れ……
これ、洗濯して返すね」
「いいって!
それよりも、風呂沸かすから身体温めた方がいいよ。服も貸すよ」

「え?そ、そこまでお世話になるわけには……」

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