Valentine’s Day〜争奪戦の始まり〜
お菓子作りは初めてのため、ケーキなど難しそうなものは作れない。だが、チョコを溶かして型に入れただけでは納得がいかず、簡単に作れそうなものを探していたのだ。

「ただいま〜」

そこへ、歩の兄が帰ってくる。その手には、チョコレート作りのための材料が入った袋があった。

「兄貴、それって……」

「おう!チョコ、頑張って作ってみることになってな」

兄が話すには、最近アメリカ人の彼女ができ、日本のバレンタインの話をしたところ、「手作りチョコ食べたい!」と言われたらしく、学校帰りにスーパーに寄って材料を買ってきたらしい。

「いや〜、チョコのコーナーにいるの女子ばっかでさ、そのコーナーにいるの超恥ずかしかったわ」

兄がキッチンにベーキングカップやチョコレートを並べていく。生クリームや苺も並んでおり、歩は首を傾げた。

「何作るの?」

「チョコカップケーキだよ。ワンボウルで作れちゃうらしい」

トッピングに苺と生クリームを使うというわけだ。その時、歩はあることを思いつく。

「兄貴、俺も一緒に作っていい?俺も女の子に渡したいからさ」
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