Valentine’s Day〜争奪戦の始まり〜
結衣は、苺がフルーツの中で一番好きだと話していた。結衣の好きなものを使いたい。

「いいぜ。ほら、手を洗えよ」

「うん!」

兄と二人で並んでキッチンに立ち、初めてのお菓子作りが始まる。無塩バターをボウルに入れてレンジで温め、少しずつ溶かしていく。その間にチョコを細かく切り、ボウルに卵とグラニュー糖と牛乳を入れてよく混ぜ、先ほど溶かしたバターも入れていく。

(恋人同士になったら、こうやって一緒にお菓子作りとかできたりするのかな?)

丁寧に教えてくれる結衣を想像し、歩は頬を赤く染める。結衣とこうしてカップケーキを作れたら、どれだけ嬉しいだろうか。

歩と結衣との出会いは、実は高校に入学してからではない。高校の入学試験の際、緊張で体が強張っていた歩に、隣の席だった結衣がチョコレートをくれたのだ。

「めちゃくちゃ緊張しますよね。そういう時は、甘いものを食べると落ち着けるんです。一緒に入学して、青春できたら嬉しいな」
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