一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか一生抱かない〜
「悠夜さんはもしかして、コイツの兄弟……なの?」


 日和の声でハッとした。自分の母親と悠夜の母親は同一人物ということだろうか?


「日和さんのほうが頭の回転が早いんだね。母さんはDVを受けていた男から逃げた後に俺を妊娠していることに気がついたんだ。つまり僕とコイツは正真正銘の血の繋がった兄弟ってこと」


 ドカンと大砲で身体を撃ち抜かれたような衝撃。立っているのが精一杯だ。自分を捨てた母親は父親からの暴力から逃げるためだった。そして日和を犯そうとしていたこの男が自分の血の繋がった弟……ということは淫魔、なのか……
 頭が痛い。ズキズキするこめかみを押さえながら突然の事実をひとつひとつたたむようにして頭の中で整理する。


「……何も知らなかった」


 知りたかったが父親はなにも教えてくれなかった。それは母親に暴力を振るっていたことを知られたくなかったからなのだうか。なにも知らずに五歳の俺は母親に捨てられたとばっかり思って絶望していた。もう考えたくなくて、事実を知ろうとするのを止めたのは自分だ。もし、もっと自分がもがいていれば何かが違ったのだろうか。母親がDVに苦しんでいる事を知っていれば五歳の自分でもなにか出来ただろうか。悠夜もこんな風に人を憎しむことはなかったのだろうか。日和がこんな目に遭わなくてもすんだのだろうか。
 ――だったのだろうか、が頭の中をぐるぐると巡る。
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