初恋を拗らせた幼馴染が婚姻届を持って溺甘淫らに求愛にやって来ました
「では、彼の分は俺が出そう」

「あざーす! 」

 金髪タトゥーの彼がペコリと頭を下げると、声を掛けてくれた男性が10枚綴りのチケットを購入してくれた。

 彼は時々こうして纏めてチケットを購入しては、食事に来てくれるお客さんだ。

 いつも目深に帽子を被り、サングラスをかけているので、顔はわからないが、おそらく同世代の20代後半〜30代位だ。

 シャツにデニムやチノパンでカジュアルだか、仕立ての良い素材で品の良さが伺える。

 何故、こんな食堂に?と不思議に思い、一度聞いてみた事がある。

「昔ながらの、素朴なカレーが好きで」

 一口、口にした後に、口角を上げ頬を綻ばせる彼に、私も釣られて笑顔になる。


 陽だまり食堂は、お客さん達のまごころで成り立っている。

 片親で夜一人になってしまう子や、ネグレストや虐待を受けて、満足に食事をしていない子達、何らかの事情があって親と上手く行っていない子達に、お客さんがワンコインで食券を買ってくれた中の200円分だけ、子供達の為に寄付をしてくれる。

 故に、ローコスト、経費削減の為にセルフサービス、メニューは二種類だけ。

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