初恋を拗らせた幼馴染が婚姻届を持って溺甘淫らに求愛にやって来ました
陽だまり食堂
「ニコちゃん、ホッコリカレー、一つね」

「はーい! いつもありがとうございます!」

 お客さんは、販売機で購入した食券を、手慣れた手つきで半分に千切って300円分を手渡し、残り200円分の半券をまごごろボックスに入れ、セルフサービスで冷水機から水を汲む。

「お待たせしました」

 カウンター越しから、お客さんのトレーにカレーを乗せる。

「今日はチキンカレーか。 う〜んっ、良いスパイスの香りだ。 美味そうだな! 」

 ここは、陽だまり食堂。

 食堂と言っても、メニューは具材とスパイスの調合が日替わりする、カレーとシチューのみ。

 かろうじて、日焼け止めを塗って、UVカットのファンデーションを塗っただけの、化粧っ気のない顔に、背中まで長く伸びて日焼けした髪を後ろで束ねただけの、年齢にそぐわない地味子の私。

 せめてものオシャレとして、纏めた髪に付けるシュシュだけは、数種類のローテーション。

 勿論、全部100均か、いらない洋服のリメイクだけど。

 午前中に、祖父母が残してくれた田んぼと畑に向かい農作業。

 お米と野菜を作っていて、食堂と家族で食べるくらいしか広さはないが、食堂で安く提供できる秘訣だ。

(まあ、生活は毎月カツカツだけどね)

 営業時間はランチ時と夕方17時〜21時まで。

 日中は私が一人でやっているので、完全セルフサービス。

 夕方からは、学校や会社から帰って来た兄弟達が手伝ってくれる。

 お客さんも常連さんが多いので、みんな手慣れたもんだ。

 












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