イケメンを好きになってはイケません⁈
「来年は早く来て、場所取りして特等席で見ようよ。それに浴衣姿も見たいな。聡子さんの」

 こうして、隣に坐って、手を握ってくれる相手を切実に求めていたんだ。

 でも……

「ねえ、わたし、やっぱり怖いよ。もしも森下くんに何かあったら」

「もう無理だって。あなたもおれが好きってことが分かった以上、何て言われようと、手放す気はないから」

 それにね、と彼は続けた。
「大丈夫。おれね、今までに何度も死にかけたことがあるんだ」

 わたしの手を壊れものを扱うように優しく撫でながら、彼は話しはじめた。

「2歳のとき、髄膜炎にかかって、そのとき、親はおれの死を覚悟したらしい。それから5歳のときには車に轢かれて大手術もしたし。夜中に家が火事になったこともあったし、飛行機のエンジントラブルで空港に引き返したこともあったな」

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