溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
そして凪の驚いた顔に,私はべっと心で舌を出した。



「……こっちなら,いいよ」



顔を背けたまま,一口分多めに掬ったスプーンを向ける。

私は渡したつもりだったのに,凪ぎが私の手首を掴んで。

頭のてっぺんを私に向けて,そのままアイスを食べた。



「……ありがと。じゃあ,行こっか」



すっと離れた凪を,私は追いかける。

そして,ワンイヤーを一周するように回って,駅への道を歩いた。



「どっか寄るところあるかなって思ったけど……道1つ挟んだだけじゃあんまり見つからないね」



来たときとは違う景色。

凪がゆっくりと辺りを見渡して,風が凪の髪を揺らした。
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