溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
凪は,本気。
けっこん…
凪のお嫁さん?

だから,何。

凪,何で…?



「昨日の夜の,僕の願いが届いたのかな」



ふふっと楽しそうな凪の声。



「願い?」



私はそろそろと凪に尋ねる。



「うん。でも,真理には秘密」



凪は私を撫でるのとは逆の手の人差し指を唇に当てた。

なにそれ。
自分で言い出したくせに。

そしてニコッと笑うと,静かに部屋を出ていく。


どうしよう,どうしよう。
凪なのに,ただの近所のお兄ちゃんなのに。
 
かっこいいからじゃ誤魔化しきれないくらい,なんか,どきどきする。



「~っすきなんかじゃ…ない……」



語尾が萎んでいく。
でも,これで良い。

私は口にしたことを反芻して,口のなかでもう一度呟いた。

そして自分の確固たる意思として,本音として,心のノートに書き込む。

好きなんがじゃ,ない。
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