溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

凪から見た世界(一頁)

          ~凪side~


ーカチャ

僕は赤面する真理をおいて,1人部屋を出た。

真理が,僕を意識してくれてる。
それも今までとは比べ物にならないくらいに。

それだけで僕の心は喜びに満ち溢れた。

本当は嬉しすぎて,戸惑う真理が可愛すぎて,思い切り抱き締めたかった。

けど,それでは真理が本気でびっくりして僕を避けるようになるかもしれなかったから。

何がきっかけになったのかは,僕には分からない。

だけど,最近の真理は何がきっかけになってもおかしくなかったから,僕も追求しなかった。
でも,もしかしたら,きっかけすら無かったのかもしれない。

可愛かったな…

僕はついさっきの真理を思い出す。

僕は真理が,僕のことを好きなことを知っていた。

きっと誰が僕の立場でも分かること。

パタ,パタ。と階段を一段一段降りながら,僕は微笑む。

だって,真理は僕といる時,ほんの少しの事で顔を赤く染めるから。

誰にも見せない顔で,微笑むから。

でも同時に,僕は真理自身が気付いていないことも知っていた。

気付かないようにしていることも。

真理が僕の同級生に嫉妬していることも,勝手に焦って苦しんでいることも知っていれば,真理が僕の心からのすきを信じないようにしている理由もなんとなく分かってる。

だから僕は,真理がもっと妬いて,苦しんで,悩んで,傷つけば良いと思ってる。

酷いと思われるかもしれないけど,本当に。

僕の言葉を,気持ちを,信じてくれないなら。
真理が自分に自信を持てないのなら。
あれこれ理由をつけて,真理が認めないなら。

認めるしかないくらい,追い詰められれば良いと思ってる。

そもそも。

ねぇ,真理?

これは,この婚約は,真理が始めたんだよ。

なのにそんなことも忘れて,婚約者だってところだけ都合よく切り取るなんて,ひどいよ本当。

それでも,真理は一度も辞めたいなんて言わなかった。

いつも僕の意思ばかり気にしてる。

僕は真理のその可愛いわがままに,もう少しだけ付き合ってあげるから。

だから,僕はなにも言わないから。
 
ちゃんと自分で気付いて,僕に伝えに来て欲しんだよ。

ずっとずっと,待ってるんだよ,真理。
本当に,ずっと。

だって,昔からずっと,僕のお嫁さんは真理しかあり得ないから。


           ~凪side~『終』
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