溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「真理が泣いてたのは,嬉しかったから?」

「…うん。そうかも」

「嫌なこと,されてない?」

「されてない」



コクリと頷いて,私はまたぎゅっと凪にしがみつく。

ふくらはぎが張って痛いなと思い始めると,凪は私の腰をグッと引き寄せて。

私は体を預けるみたいにして,前に倒れた。



「皆,いいひとだから。元々大好きなの。山田くんはいつも日直でもないのに白板消してるし,山内くんは体育前電気消して目隠し板つけていってくれるし,南さんは提出物集めてくれるし,加藤さんはよく笑う」



だから。



「嫌なことなんて1つもないよ」



だって。




「皆凪みたいに優しい」



1番はやっぱり凪だけど。

そう思う。

少し胸板を押して凪に笑うと,また地震みたいに戸惑いで教室が揺れる。

? 

と私がそちらに意識を向けようと首を動かせば,凪は私の顔を隠すようにぎゅっと肩に押し付けた。

ほんの少しだけ,くるしい。
< 81 / 196 >

この作品をシェア

pagetop