溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「凪?」

「いつもみたいに人見知りですってツンツンしててよ,真理のばか。可愛くていい子ですって吹聴してどうするの。あー,真理と2人で帰りたい」

「凪? なに? なに?」



モゴモゴと口を動かすしか許されない。

頭をぎゅっと抱かれて,何も聞こえない。

教室はいつの間にかしん…としていて,私はうごうごと凪の腕から脱出した。



「凪,なんでここにいるの?」



凪とは学年が違うどころか,階も棟も違う。



「頑張ってるかなって真理を見に来たんだよ。自販機っていったら簡単に抜けれるから」

「じゃあ…だめじゃん」

「うん。だからもう戻ろっかな。真理も来る?」

「無理だよ」



突然行くなんてだめだよ。

それに凪のクラスには会いたくない先輩が一杯なんだもん。
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